霧が変わる前の一拍
方と私は落果斜面の安全な観測線から記録した。種の跡が途切れている。一頭のバクは霧圧が変わる前に短い鼻先の二枚の弁を閉じ、上層の回廊で足を止めた。私たちもその場で待った。

当日の観察
安全な外縁の観測線を離れなかった。霧肺の落果斜面で途切れた種の跡を見て、双弁鼻弁の分岐路では鼻先を遠くから観察し、上層の種根斜面ではバクの採食路を迂回した。陥没穴の禁入の深部には入らない。
朝 · 霧肺の落果斜面
落果と種の線が斜面で急に切れていた。方は高台から途切れた地点を追い、私は基地との連絡を保った。霧の向こうの上層路に、ずんぐりした一頭のバクが見える。こちらの圧力計が変わる前に、短い鼻の先の二枚の肉質の弁が、中央のくぼみを挟んで合わさった。バクは立ち止まったままで、こちらへは来ない。私たちは安全な観測線から種の跡を記し、あとを追わなかった。
昼 · 双弁鼻弁の分岐路
少し近い視界で見ると、鼻先の二枚の弁はまた開いていた。肩から肋へ続く幅広い皮膚のひだが呼吸に合わせて平らになり、また寄る。独立した気嚢ではない。方は離れた上層の台で霧圧を読む。私は近くの測位浮標が出す連続音波を一部止めた。古い音波が霧圧の読みを紛らわせていたのかもしれない。変えるべきなのは私たちの機器で、バクの歩き方ではなかった。
夕方 · 上層の種根斜面
霧圧が下がると、単独の成体は上層の斜面で落果を食べた。種は苔岩の段へ続く道に残る。方と私はその進路を避け、距離を保った。静かになった浮標の記録を水路と照らし合わせる。近くで撮るために、あの道を乱すつもりはない。外縁で見えたことを、無光の深部で起きたことにまで広げない。
棲地の因果
滝の霧は段になった苔岩と分かれた集水池を渡る。古い測位浮標の連続音波は岩段で反射し、局所の霧圧と浅い流れを読む警報を狂わせる。バクは計器の値が落ち着く前に弁を閉じ、一瞬呼吸を止める。その反応は圧の変化を示す。近くの連続音波を止めれば、人が作った読み違いを減らせる。それだけで陥没穴の深部まで変わったとは言えない。
種の行動
約三メートルのバクは短くしなやかな鼻先に二枚の幅広い肉質の弁を持ち、中央のくぼみを挟んで閉じる。肩と肋の浅い皮膚のひだは呼吸とともに動き、丸い気嚢は突き出ない。成体は多くの場合単独で、霧の中で足を止めたあと落果を食べ、上層の森へ続く道に種を運ぶ。幼体がいる場合も遠くから続くが、この一頭には同行していなかった。
「変えたのは浮標と私たちの歩調だ。バクの道ではない。深部については、今日の結論に入れなかった。」


