01生態図鑑
怪物とは、人間が未知に与えた名前にすぎない。ここでは彼らの本当の暮らしを記録する。
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10雷天蓋オニイトマキエイ
海面と蒸気層に漂う発光性の磁気藻を濾過摂食する。峡湾で記録されたほかの四種を捕食せず、方とKにも攻撃性を示さない。レーダーの干渉パルスに進路を塞がれると、無理に通過せず天門の外で待つ。
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18アンカーホール造礁ガニ
頑丈な6本の歩脚で流れに耐え、2本の鈍いハサミで空の殻、鉱物化した藻、剥がれたケーブル繊維を押し固める。緩流の通路となる孔は開けたままにし、最も強い反復パルスに面した孔を閉じる。警戒心は強いが方やKを攻撃せず、二人が育幼域の中心部に入らなければ築礁を続ける。
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33季風花鼻オオコウモリ
群れは斜めに降る雨の間を低く滑空し、鼻葉で捉えた安定した風圧を手がかりに林冠経路を保つ。花蜜を吸うと、胸の長毛へ自然に花粉が付着する。塔脚の支柱が低周波振動を増幅すると、群れ全体が種子庫を迂回する。支柱が隔離されると雨間へ戻り、浮遊種子筏へ花粉を運ぶ。
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36硫冠チューブワーム群
共生菌を通じて地熱性硫化物を取り込む環形動物である。磁器のような白い鉱物管は泉岸に固定されたまま、圧力上昇前に緋色の鰓冠だけを引き込める。収縮は最も熱い側から順に進み、目に見えない塩水の移動に方向を与える。冷水涵養が熱塩水を押さえると、外縁から群れごとに鰓冠を開く。
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40溶岩脈重冠オオウシ群
群れは二重角冠の共振で地下の熱脈を読む。首沿いの淡い窓から体熱を逃がし、巨大な割れ蹄で熱泥を越えながら、一歩ごとの圧を湿地全体へ分散する。偽の震動が幼獣を脅かすと、雄は突進せず、残った隙間へ横向きに立つ。通過時は幼獣が内側を歩き、成獣雌が角冠で硫黄泉の縁から隔て、雄が最後に高堤を離れる。
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48霜穿ち槌牙セイウチ群
成獣は横に広く平たい槌状の牙で呼吸孔の新しい氷を砕く。吻ひげで二枚貝や氷下の頭足類の潜む層を探る。砕けた貝殻と頭足類の嘴が、この場所での採餌を示した。母系家族は体を広い環状に並べて幼獣を内側に守り、方とKへ近づかずに薄氷上の通路を塞ぐ。除氷パルスが止まると、孔を守る雄が残る薄氷を砕き、家族は元から使っていた水路を幼獣とともに進んだ。
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49塔輪ユキザル群
成獣は幅広い手で廃塔から落ちた陶製の絶縁リングを拾い、風向きに合わせて低い塔の横木に掛ける。短い尾は体の脇に寄せ、中空の白い肩毛で保温する。三種類の音程は風を避けられる雪穴、塩水の呼吸孔を回る道、シロフクロウの巡回境界より先へ進まない線を示す。幼獣は安全な横木のそばで音をまねる。新しい環は古い環を覆わず、世代をまたぐ避難経路を残す。三段の打音は除氷装置の作動時刻をセイウチや小動物にも伝える。塔線試験が音を覆うと幼獣数頭が台の縁で止まり、試験停止後には成獣が元の順番で環を鳴らした。群れは方とKに近寄らず、風を避けられる階段の一部を空けた。
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50静圧シロフクロウ
同心円状の顔盤で気圧の変化を捉え、連なる柔らかな縁の風切羽で雪の稜の上の静かな層を身を低くしてほとんど音を立てずに滑空する。二叉の尾は塔の間で向きを変える圧力舵になる。暖かい裂け目の大型魚、海鳥、中型哺乳類を捕食する。育雛域を巡回するときの翼の吹き下ろしは雪庇を持ち上げ、退路を塞ぎうる。初遭遇時には最高救援塔で翼をたたんだまま、顔盤だけを周波数のずれた主ケーブルへ向けていた。人間のパルスが弱まるとケーブルを追うのをやめ、低い姿勢を解き、遠い塔沿いに育雛域へ戻った。
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55懸池裂け水かきオオカワウソ
成獣は濡れた枝や貯水池をつなぐ越流の隙間で獲物を待つ。幅広い前脚の指の間にある水かきは裂片に分かれ、枝に足を掛けると開閉して縁から水が樹池へ落ちる。短く密な防水毛は水から上がっても寝ず、太く扁平な尾は水中で舵を取り、枝の水路を越える強い波を起こせる。魚の鱗、水鳥の羽、濡れた枝の痕跡から、中型の魚や水鳥を食べることが分かる。小型の樹上性哺乳類も獲物に含まれる。育児池の境界を巡り、方やKに近づかない。内側へ水が戻ると、幼獣を連れて自ら元の水路を泳いで帰る。
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