草帯を守る迂回路
冷たい霧の中、古い索道の支柱は輪郭の一部しか見えなかった。その下で草の食痕が途切れる。方は葉の切れ目を追い、私は一段高い道から風を確かめた。葉の間に一匹の幅広い後脚が見えた。

当日の観察
朝は折翅の草帯で途切れた食痕を追い、風向きを確かめる。昼は後脚の風よけ岩隙で支柱の振動を比べ、定周波数試験を止める。夕方は雲海の草斜面下縁から脇道へ退き、草帯をつなげたままにする。
朝 · 折翅の草帯
冷たい霧の中、古い索道の支柱は一部しか見えない。草の食痕は支柱の方へ伸びて途切れていた。方は葉の切れ目を追い、私は上の道から風向きを確かめる。手のひらほどの長さのキリギリスが一匹、草の根元にいた。細長い触角の後ろに二段に畳んだ後翅が見える。幅広く柔らかな後脚の跗節が地面を支えていた。冷たい霧の草を低い姿勢で食べ、群れはつくらない。この途切れと古い鉱道の連続振動は重なっているかもしれない。それでも一本の痕跡で斜面全体は語れない。私は風向き、石段、時刻を記し、前日の手掛かりとも照らした。方に言われて、安全な帰り道も地図に入れた。
昼 · 後脚の風よけ岩隙
低い位置から、二段の後翅が閉じるのを見た。風が強まると、柔らかな後脚の跗節が岩の隙間で踏ん張り、振動を受け流す。方は後方で古い支柱の脈動を比べる。私は近くの補修車の定周波数試験を止めた。個体には触れず、設備故障の原因とも決めつけない。岩の地衣類、草帯、獣道、上空の風の通り道、そしてこの隙間。それぞれが別の手掛かりだ。朝の風と時刻をもう一度照らしたが、山のすべての変化を一台の機械のせいにはできない。
夕方 · 雲海の草斜面下縁
補修車が止まったまま、一匹のキリギリスが草帯へ戻って食べ始めた。まばらな糞粒が薄い土に落ち、食べた植物を土へ返す。方と私は脇の斜面から退き、草帯を途切れさせずに残した。三つの場所と前日の記録を比べてから、棲地の外を通る補修路を地図に引く。値を確かめるために車を草の中へ通す必要はない。退路も同じ地図に入れた。山には山のリズムがある。設備のほうが道を譲れる。
棲地の因果
古い鉱道の連続振動は索道支柱を通って冷たい霧の草地へ伝わり、獣道と上空の風の通り道の観測値をずらしうる。鉱山からの滲出物は外縁の岩に生える地衣類が固定する。食痕の切れ目や後脚の休息地点は影響区間を示すかもしれないが、風、地衣類、獣道、前日の記録を比べるまで広い斜面の結論は出せない。定周波数試験を止め、補修路を迂回させれば草帯を保てる。
種の行動
単独性の成体は手のひらほどの長さで、後翅を二段に畳み、幅広く柔らかな後脚の跗節で踏ん張る。地際の草を食べ、強風には岩の隙間へ伏せる。まばらな糞粒が植物を薄い土へ戻す。
「草帯はつなげたまま、退路は地図に残した。棲地を動かす前に補修路を曲げられる。」


